冬の蝶
灰色深き冬空の
見る見る雨のこぼれきて
膚はだへに告ぐる寒き日を
覚束なくも飛ぶ蝶よ。
見る見る雨のこぼれきて
膚はだへに告ぐる寒き日を
覚束なくも飛ぶ蝶よ。
春は菫の花に泣き
夏は小百合の香に酔ひて
闌なりしその夢は
萩吹く風にさめたるか。
つらく悲く淋くて
われも泣きたきこの雨よ
なが脆くして美しき
羽をうたするになど耐へん。
われも泣きたきこの雨よ
なが脆くして美しき
羽をうたするになど耐へん。
夕くれさればこの雨は
やがて雪ともかはるべし
さらば凍えんなが命、
それとも知らで飛ぶことか。
長らふまゝに吹きつのる
嵐烈しき世と知らば
紅葉が下もとに汝な が骸からを
埋めたらんに口惜しく。
嵐烈しき世と知らば
紅葉が下もとに汝な が骸からを
埋めたらんに口惜しく。
われもこの世は佗び果てゝ
暫しは歌にかくるれど
まださめやらぬ胸の血ぞ
来ても縋れや冬の蝶。
◯
石の上に白き胡蝶の凍えたり。
大塚甲山
まだ・・・季語な感じの冬の蝶では無いですね。